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高知地方裁判所 昭和52年(ワ)73号 判決

原告

井上国幸

原告

門脇静子

原告

池上年春

原告

内田朗

右四名訴訟代理人

藤原周

藤原充子

被告

高知県

右代表者知事

中内力

右訴訟代理人

中平博

外三名

主文

一  被告は、

1  原告井上国幸に対して金五三万七〇七七円及び内金四八万七〇七七円について

2  原告門脇静子に対し金一六六万八〇〇〇円及び内金一五一万八〇〇〇円について

3  原告池上年春に対し金七五万六〇〇〇円及び内金六九万六〇〇〇円について

4  原告内田朗に対し金三八万七〇〇〇円及び内金三五万七〇〇〇円について

いずれも昭和五一年九月一一日から完済まで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告井上国幸、同門脇静子、同内田朗のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は被告の負担とする。

事実《省略》

理由

一請求原因1(愛宕山の位置)、同3(昭和四七年災害の発生)、同4(本件工事の施行、昭和五一年五月の亀裂の発生とその処置)、同5(本件災害の発生)の各事実、並びに、同2(原告らの家屋の位置等)のうち、原告が昭和五一年九月一一日当時愛宕山の南東側の山麗において家屋を所有ないし賃借して居住していたこと、はいずれも当事者間に争いがない。

二そこで、請求原因6(被告の責任)について判断する。

被告が昭和四七年災害後本件工事を施工し以後同工事によつて完成した工作物を公の営造物(以下「本件営造物」という)として管理してきたことは当事者間に争いがないが、原告らは右営造物の設置・管理に瑕疵があつた旨主張するので、以下右瑕疵の有無について検討する。

1  まず、鋼製土留工の瑕疵の主張(請求原因6(二))から判断する。

本件工事において、法切工実施後の法面安定のため法面最下部より上方三〇メートルの法面中段(別紙第一図……の位置)に鋼製土留工として長さ116.8メートルにわたり後記のH鋼杭五二本を打ち込みH鋼とH鋼との間には透水性のあるエキスバンドメタル(亜鉛メッキ金網)を張つて背後に土を埋め戻し、軽量と透水性を確保する土留工が施工されたこと、土留工は上方からの土圧に堪え地すべりを抑止し得るものでなければならないから、これが効用を発揮するためにはその支えとなる杭を基盤岩に打ち込む必要があること、本件工事に使用した杭がH鋼で長さ4.2メートルでありそのうち2.4メートルが打ち込まれたこと、はいずれも当事者間に争いがない。

〈証拠〉を総合すると、愛宕山の基盤岩は秩父層で古生代二畳系の砂岩、泥岩、チャートより成るが風化作用を強く受けており、本件工事が施工された法面は、本件災害当時、強い風化作用を受け岩の組成をわずかに残す砂質土(シルト状)になつていたこと、そのためいわゆる安定層たる基盤岩はかなり深部に位置し、表層及び風化層を併せた不安定層の厚さは、別紙第一図BV-1地点では約3.3メートル、同図BV-2地点では約四メートル、同図BV-3地点では約七メートルであつたこと、本件崩壊時におけるすべり面の表層面からの深度は、別紙第一図BV-1地点では約3.3メートル、同図BV-2地点では約3.0メートルと推定されること、そのため、同図D測線上におけるH鋼の杭の下端は別紙第三図に示すとおり、また別紙第一図E測線上におけるそれは同第四図に示すとおり、いずれもすべり面に到達していなかつたことと、また別紙第一図F測線上におけるH鋼杭の下端も同様に基盤岩には到底到達していないと推定されること、本件崩壊直後の本件崩壊地上にあつたH鋼杭の状態をみると、それらはいずれも支持力を失い崩壊土砂とともに流されていること、以上の事実を認めることができ、右認定に反す証拠はない。

ところで、本件鋼製土留工は、上方からの土圧に堪え地すべりを抑止して法面の安定をはかるため前記のような工法で施行されたのであるから、その支えとなるH鋼杭がしつかりと基盤岩に打ち込まれる必要があるところ、右認定事実によれば、本件崩壊地付近において、本件鋼製土留工における杭打ちは、杭が安定層たる基盤岩に打ち込まれていないという根本的な欠陥があつたものといわなければならず、本件営造物はまずこの点において瑕疵があつたものというべきである。

ところで、被告は、本件工事においてはまず法切工を実施して風化土層のすべてを取り除き、基盤岩を露出させた後にH鋼杭を基盤岩に打ち込んで本件鋼製土留工を施工したのであるから、右工事時点においては杭は基盤岩に打ち込まれており、十分な地すべり抑止効をもつていたのであるが、本件工事施工後三ないし四年の間に基盤岩が風化してしまつたために、H鋼の杭の下端がすべり面に届かないような現象を生じたものであると主張し、証人田村昭は右主張にそう証言をするが、被告主張のように風化土層のすべてを削りとつて基盤岩を露出させたのだとしたら、右基盤岩がわずか三ないし四年の間に、前示のように表層から三ないし七メートルの深さまで風化土層と化してしまうことは、地質学上の常識に照らして容易に考え難く、右証言は採用できない。また、前記乙第七号証の二五頁には、「本件工事でかなり法切りが実施され、固結度の高い層が露出していたが、三、四年の間にかなり風化された」との、一見被告の主張にそうかの如き記載部分があるが、右記載部分にいう「固結度の高い層」の意義が明確でないところ、右「固結度の高い層」という言葉は、右乙第七号証の記述の全体の趣旨と地質学上の常識に照らして考えれば、「強度に風化が進行していたが、未だ完全に風化土層と化してはいなかつた地層」という程度の意味に理解され、被告の主張する「安定層たる基盤岩」を意味するものとは解されない。他に、被告の主張を認めるに足りる証拠はない。

なお、被告は、本件鋼製土留工において打ち込まれたH鋼杭は、同杭打工施工後地上に露出した高さ1.8メートルの壁材にかかる背面土砂の圧力に十分堪え得るものであつたと主張し、その安定計算の結果を乙第二〇、第二一号証(いずれも成立に争いがない。)として提出しているが、右安定計算は、あくまでもH鋼の杭が安定層たる基盤岩に打ち込まれていることを前提とするものであるから採用の限りでない。

以上のとおり、本件鋼製土留工は、少なくとも本件崩壊地上においては、H鋼の杭が安定層たる基盤岩に打ち込まれていなかつたのであるから、地すべり抑止の効用をもつはずがなく、瑕疵があつたことは明らかであるというべきである。

2  次に、十分効用のある水抜工が施工されていなかつた旨の主張(請求原因6(三))について判断する。

本件工事においては、斜面上を流下する表流水の排水対策については水路工が施工されたこと、法面中段の鋼製土留工に透水性に富んだエキスバンドメタルが用いられたこと、しかし地下水の排水対策については暗渠を設ける等の特段の工事は施工されておらず、単に法面最下部のコンクリート土留工に排水孔が設けられたのみであること、はいずれも当事者間に争いがない。

ところで、〈証拠〉によれば、斜面崩壊は、要するに斜面の土塊を支えるせん断抵抗力が低下して起きる現象であるが、水は、そのせん断抵抗力を低下させる作用を有し、多数の斜面崩壊は、豪雨等による浸透水の増加に起因して地下水位が上昇し、間隙水圧が臨界点を越えて発生するものであること、そして、本件崩壊もその発生機構は、(1)降雨により表土層、風化層が含水軟弱化、(2)豪雨による雨水が地下に浸透して地下水位を上げ、間隙水圧が臨界点を越えて地すべり性亀裂が発生。拡大、(3)拡大した亀裂に豪雨が流入して本件崩壊が発生、という経過をたどつたものであること、したがつて、崩壊防止のためには、十分な排水対策がなされていることが必要であり、少なくとも湧水の認められる斜面では、排水工として、地表面の排水対策工のみでは不十分であり、地下水の排水対策工が必要不可欠であること、そして、昭和四七年災害の際も、本件崩壊後においても、いずれも各崩壊地の頂部付近に多量の湧水が見られたこと、がそれぞれ認められ、右認定に反する証拠はない。

然るに、本件工事においては、前示のように、暗渠を設ける等の、地下水の排水対策のための特段の工事は何らなされておらず、単に法面最下部のコンクリート土留工に排水孔が設けられたにすぎないのであるから、水抜きのための設備が不十分であつたといわざるを得ず、本件営造物は、この点でも基本的な瑕疵があつたものといわなければならない。

もつとも、被告はこの点について、本件工事においてはまず法切工を施工し、基盤岩が露出するまで風化土層のすべてを削りとったのであるから、法切工施工前の基盤岩と風化土層との間を流れた地下水は表流水となり、その意味で、地下水はもともと存在しないことになったのであるから、したがつて、地下水の排水対策は必要なかつたものであると主張する。

しかしながら、本件工事において基盤岩が露出するまで風化土層のすべてを削りとつた旨の被告の主張が採用し得ないことは前記説示のとおりであるから、被告の右主張はその前提を欠き、失当であることは明らかである。

三以上認定のとおり、本件営造物には少なくとも前示二つの瑕疵が認められ(なお、当裁判所が、基盤岩が露出するまで風化土層のすべてを削りとつた旨の被告の主張を排斥しながら、法切量が不十分であつた旨の「法切工の瑕疵」の主張を採用しなかつたのは、法切量が不十分であるか否かは、当該法面の、傾斜角度をはじめとする諸々の諸条件を考慮に入れて安定計算をした結果でないと、単に基盤岩を露出させていないということだけから直ちに断定することはできないと思料したからである)、右各瑕疵が原因で本件崩壊を生じさせたものと認められるから、それによつて原告らが蒙つた損害について、被告は国家賠償法二条一項によりこれを賠償すべき責任のあることは明らかである。然るに、被告は、本件営造物の設置・管理に瑕疵があつたことを争い、本件崩壊は、訴外大一建設株式会社が無許可で宅地造成工事を行い、愛宕神社への裏参道として山を切り開いて幅約四メートルの道を新設したため、愛宕山上に降つた雨の大部分が右参道より流下し本件崩壊地側に流入したこと、並びに本件崩壊時における豪雨の量が未曾有のものであつたことが原因で生じたものであると主張するので、以下、被告の右主張について付言する。

まず、無許可宅地造成工事により創設された裏参道が本件崩壊地側へ降雨を集水流下させた旨の主張についてみるに、〈証拠〉によれば、訴外大一建設株式会社が本件崩壊地の南側隣接地において無許可で宅地造成工事を行い、昭和五一年四月頃愛宕神社への裏参道として幅員約四メートルの道を創設したこと、ところで、愛宕山頂に降つた雨水が右参道を流下し、宅地造成地内や下方人家等に流れて危険を及ぼす状況にあつたので、被告により緊急災害防止措置命令が発せられた結果、同年八月までに右命令どおり土のう積工及び盛土等の工事がなされて右参道を流下した雨水は既設ないし仮設の排水路に流入する工事が完了したこと、右工事の完了によつて本件崩壊当時には右参道を流下した雨水が本件崩壊地側に流入することは殆どなかつたことが認められる。他に被告の右主張を認めるに足りる証拠はない。

次に、本件崩壊時における豪雨が、未曾有の豪雨量であつた旨の主張についてみるに、〈証拠〉により、雨の降りはじめた昭和五一年九月八日から本件崩壊が発生した同月一一日午後九時までの降雨量を本件崩壊地に近い高知市内消防江の口出張所における調査でみてみると、次の如くであることが認められる。

九月 八日 〇時から二四時まで

一三六ミリメートル

同月 九日 同右

八一ミリメートル

同月一〇日 同右

七三ミリメートル

同月一一日 〇時から二一時まで

二八一ミリメートル

(以上累計 五七一ミリメートル)

ところで、〈証拠〉によれば、高知県の一八九六年から一九五二年までの五七年間において、最大日雨量は425.3ミリメートルであり、一〇〇ミリメートル以上の日雨量を記録したことは一六五回(うち、二〇〇ミリメートル以上は二一回)あることがそれぞれ認められ、これによれば、本件崩壊時における降雨量が相当のものであつたことは否定し得ないが、さりとて、それが未曾有の降雨量であるとは到底認め難い(被告は、昭和五一年九月一二日の降雨量が五一三ミリメートルで過去に絶無であつた旨主張するが、本件崩壊後のことに関する右の主張は意味をなさず、失当である)。

以上のとおりであるから、本件崩壊時における降雨は、本件崩壊の誘因となつたことはもとより疑いを入れないところであるが、その降雨量が未曾有の量であつて、そのために――すなわち本件営造物に前示の瑕疵がなくとも――本件崩壊を生じさせたものである旨の被告の前記主張は失当である。

四そこで、原告らが蒙つた損害について判断する。

1  原告井上

(一)  家屋修理費、家具・鯉の損失、得べかりし家賃収入 金三八万七〇七七円

〈証拠〉を総合すると、原告井上は、本件崩壊当時請求原因2記載のとおり原告井上居宅を所有してこれに居住し、井上アパートを所有してこれを賃貸していたこと、本件災害により、請求原因7の(一)の(1)記載のとおりの被害を受け、右各家屋の修理費として金一八万三〇七七円を支出したこと、本件災害により、同7の(一)の(2)記載の動産を損壊され池の鯉も流失したが、これらは本件災害当時合計二万五〇〇〇円の価値を有していたこと、本件災害後同7の(一)の(3)記載のとおり(但し、同項(ハ)の本件災害以前である昭和五一年七月、八月分の各一万円を除く)得べかりし家賃収入金一七万九〇〇〇円を失つたこと、がそれぞれ認められる。

原告井上は、その本人尋問において、井上アパート西半分二階の借家人が昭和五一年五月の亀裂発生により崩壊を恐れ、同年六月退去して空室となつたので、同年七・八月分の各一万円宛の得べかりし家賃収入を失つた旨同原告の主張にそう供述をするが、果して右借家人が崩壊を恐れて退去したのか否かについて右供述のみではにわかに措信できず、他にこれを裏付けるに足りる証拠はないから右主張を認めることはできない。

(二)  慰謝料 金一〇万円

〈証拠〉を総合すると、原告井上は、昭和五一年五月の亀裂発生以来崩壊の不安に悩まされ、被告、訴外高知市等に対し災害防止方の陳述をくり返してきたこと、然るに十分な対策が講ぜられないまま本件崩壊による災害に遭遇したこと、本件災害後長期間不便な生活を強いられたこと等により多大の精神的苦痛を蒙つたことが認められ、これを慰謝するには金一〇万円が相当である。

(三)  弁護士費用 金五万円

本件訴訟の難易、認容額等を考慮すると、弁護士費用として金五万円を本件災害と相当因果関係のある損害と認める。

2  原告門脇

(一)  家屋の損害 金一〇万円

〈証拠〉によると、原告門脇は、請求原因2記載のとおり原告門脇賃借部分に居住していたこと、請求原因7の(二)の(1)記載のとおり家屋の改築、増築、新築をし合計金六一万円の費用を支出したこと、然るに本件災害により原告門脇賃借部分、同増築部分、同新築部分はすべて倒壊したこと、がそれぞれ認められる。

ところで、右のうち、原告門脇の改築、増築部分は、いずれも民法二四二条本文に規定する附合の理論により建物所有者である訴外笹岡の所有に帰したものと解せられ、原告門脇が本件災害当時所有していた家屋を喪失したとしてその損害賠償を求め得るのは、請求原因7の(二)の(1)の(ロ)記載の新築部分のみであり、前掲各証拠によれば、原告門脇は同部分の新築費用として金一一万五〇〇〇円の費用を支出したことが認められ、右新築部分は、本件災害当時なお金一〇万円の価値を有していたものと認めるのが相当である。

(二)  動産の損害 金一〇一万八〇〇〇円

〈証拠〉によると、原告門脇は、本件災害により、冷蔵庫、洗濯機を除く一切の動産を損壊または使用不能にされ、金一〇〇万円の損害を蒙つたこと、また、本件災害により冷蔵庫、洗濯機が破損され、冷蔵庫の修理に金一万円、洗濯機の修理に金八〇〇〇円を支出したことがそれぞれ認められる。

(三)  慰謝料 金四〇万円

〈証拠〉によれば、原告門脇は、昭和五一年五月の亀裂発生後毎日不安な生活を余儀なくされ、本件災害後長期の避難生活を強いられたうえ住居を移転しなければならなかつたこと、本件災害により家族の写真、感謝状、記念品等大切にしていたものを失つたこと等により多大の精神的苦痛を蒙つたことが認められ、これを慰謝するには金四〇万円が相当である。

(四)  弁護士費用 金一五万円

本件訴訟の難易、認容額等を考慮すると、弁護士費用として金一五万円を本件災害と相当因果関係のある損害と認める。

3  原告池上

(一)  家屋の損害 金一〇万円

〈証拠〉によれば、原告池上は、請求原因2記載のように原告池上賃借部分に居住していたこと、請求原因7の(三)の(1)記載のように台所を改造し、風呂場兼物置を新築して合計金二〇万円(内訳はほぼ前者が金八万円、後者が金一二万円ずつ)を支出したこと、然るに本件災害により原告池上賃借部分、同新築部分はすべて倒壊したことが認められる。

ところで、右のうち、台所改造部分は民法二四二条本文により建物所有者である訴外笹岡の所有に帰したものと解せられるから、原告池上が本件災害当時所有していた家屋を喪失したとしてその損害賠償を求め得るのは右新築部分の喪失についてのみであり、同部分は本件災害当時なお金一〇万円の価値を有していたものと認めるのが相当である。

(二)  動産の損害 金四〇万円

〈証拠〉によれば、原告池上は、原告池上賃借部分に畳、ガラス戸、ふすま、障子、流し台、ガス台、ハイザー等を備付けて金一〇万八〇〇〇円を支出したが、これらは同部分及び右風呂場兼物置にあつた他の動産一切とともに、本件災害により損壊または使用不能にされた。これら動産は、本件災害当時合計金四〇万円の価値を有していたものと認めるのが相当である。

(三)  慰謝料 金三〇万円

〈証拠〉によれば、原告池上は、昭和五一年五月の亀裂発生後毎日不安な生活を余儀なくされ、本件災害後長期の避難生活を強いられたうえ住居を移転しなければならなかつたこと、本件災害により家族の写真帳、記念品等大切にしていたものを失つたこと等により多大の精神的苦痛を蒙つたことが認められ、これを慰謝するには金三〇万円が相当である。

(四)  弁護士費用 金六万円

本件訴訟の難易、認容額等を考慮すると、弁護士費用として金六万円を本件災害と相当因果関係のある損害と認める。

4  原告内田

(一)  動産の損害 金三〇万七〇〇〇円

〈証拠〉によれば、原告内田は、請求原因2記載のとおり原告内田賃借部分に居住していたこと、本件災害により請求原因7の(四)の(1)記載のとおりの被害を受け、そのうちバイクモーターを除いた動産一切は本件災害当時金三〇万円の価値を有していたこと、バイクモーターの修理に金七〇〇〇円を支出したこと、が認められる。

(二)  慰謝料 金五万円

〈証拠〉によれば、原告内田は、請求原因7の(四)の(2)記載のとおりの諸事情により多大の精神的苦痛を蒙つたことが認められ、これを慰謝するには金五万円が相当である。

(三)  弁護士費用 金三万円

本件訴訟の難易、認容額等を考慮し、弁護士費用として金三万円を本件災害と相当因果関係のある損害と認める。

5  以上によれば、原告らの蒙つた損害は次のとおりとなる。

(一)  原告井上

金五三万七〇七七円(内弁護士費用金五万円)

(二)  原告門脇

金一六六万八〇〇〇円(内弁護士費用金一五万円)

(三)  原告池上

金八六万円(内弁護土費用金六万円)

(四)  原告内田

金三八万七〇〇〇円(内弁護士費用三万円)

五  結論

以上のとおりであるから、被告は、原告井上に対し金五三万七〇七七円及び内金四八万七〇七七円について、同門脇に対し金一六六万八〇〇〇円及び内金一五一万八〇〇〇円について、同池上に対し金七五万六〇〇〇円及び内金六九万六〇〇〇円について、同内田に対し金三八万七〇〇〇円及び内金三五万七〇〇〇円についていずれも本件災害日である昭和五一年九月一一日から完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務のあることは明らかであり、原告らの本訴各請求はこの限りで認容し、原告井上、同門脇、同内田のその余の請求はいずれも理由がないから棄却し、仮執行宣言の申立は相当でないからこれを却下し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条をそれぞれ適用して主文のとおり判決する。

(山口茂一 増山宏 坂井満)

別紙図面二、三、四〈省略〉

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